園長先生からの質問 Q18

“保育に役立つ”園長のための保育園の人事労務講座
~よい労務管理はよい保育を生む土づくり~

うちの保育園ではいままで何よりもみんなでよい保育をすることが最優先で、法律のことや管理のことはあまりしてこなかったんです。でも職員も増えたことですし園長の私がいつまでもというわけにはいかないですし、労務面もがんばりたいと思っています。「法定3帳簿」の整備が労務管理の基本と聞きましたが、この法定3帳簿って何でしょうか?

1、出勤簿、給与明細書、就業規則
2、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書(労働条件通知書)
3、出勤簿、賃金台帳、シフト表
4、出勤簿、給与台帳、雇用契約書(労働条件通知書)
5、出勤簿、賃金台帳、労働者名簿

答え(1つ)

答えの詳細

以下の法定3帳簿は、就業規則や雇用契約書(労働条件通知書)とともに、
実務においても社会保険の手続きや雇用保険の手続きにおいてなどは必ず提示を求められます。3年間の保存義務もあります。
もう一度、保育園内の3帳簿を見直しできるところからきちんと整備しておきましょう。
同じく法律で定められている、就業規則や雇用契約書(労働条件通知書)を見返しながら一緒に整備していくとよいでしょう。

①出勤簿

「出勤簿」という名称については、法律上の規定はありませんが、以下の内容が把握できるものを作成します。

<出勤簿等の記入事項>
1.氏名
2.出勤日
3.始業終業時間、休憩時間、残業時間等

出勤簿は職員の出退勤(労働時間)を管理・把握するものですが、その把握方法は法律では指定されていません。
タイムカードが一般的ですが、出欠に印をつける出勤簿がなじみやすいと考える保育園さんも多いでしょう。
ただしその場合は、以下のポイントを参考に、始業終業時間や労働時間数等を記録しておく必要があります。

・労働時間の管理、把握が客観的に判別でき適正である
・時間外労働時間の勤務簿等が別にあり適正に管理している
・シフト表などが勤務の実態に合っていて実績を管理している
・タイムカードの打刻方式または同内容で記録している

この出勤簿が重要な理由は次の3点です。

まず、使用者は労働者の労働時間を適切に管理する責務があることから、
労働者の勤務について適正に把握できる帳簿の整備が必要になってきます。

「自己申告制」による始業時刻・終業時刻の確認・記録も認められてはいますが、
職員が多いと現実的に確認もしきれず注意が必要です。

次に、適切に賃金支払いをするための給与計算の際も使用することになります。
そのため単に出勤日のみを記載するのではなく、勤務時間等もきちんと把握できる仕組みが必要です。

シフト表で時間管理をしている保育園さんがとても多いですが、事前に計画した「予定シフト表」だけでなく、
勤務時間の変更や残業時間の発生など、時間管理をだれがみてもわかりやすいように工夫する必要があります。

最後に、労働時間数などの把握を通じた職員の健康やコンディションへの配慮です。
社会的にも職員の健康管理の側面からも重要な帳簿という認識が強まってきています。

「実績シフト表」「時間外・時間調整管理簿」などで保育園の実際にあわせて工夫し、
勤務時間の「予実管理」を進め、すっきり明快な時間管理に取り組んでいきましょう。

②賃金台帳

以下の8つの項目がもれないようにしましょう。
給与明細書などで代用しないようにしましょう。

<賃金台帳の記入事項>
1.氏名
2.性別
3.賃金の計算期間
4.労働日数
5.労働時間数
6.残業時間、休日、深夜労働時間数
7.基本給、手当、その他の賃金ごとの金額
8.税金など控除される金額

③労働者名簿

職員が勤務する上での基本情報を記録しておける名簿です。
履歴書や雇用契約書(労働条件通知書)で代用しないようにしましょう。
変更があったときは変更し、緊急連絡先なども記載できるようにするとよいです。

履歴の欄で質問が多いですが、辞令を交付する度に記入したり、
賞罰の記録や、職員の長所やキャリア形成を図る上での実績などを記載してもよいと思います。

なお、労働者名簿の様式も特に定められていませんので、
必要事項が記載できる様式であればどのようなものでも構いません。
1人1枚の必要はなく、管理しやすいようであれば一覧表で作成しても良いです。

<労働者名簿の記入事項>
1.職員氏名
2.生年月日
3.履歴
4.性別
5.住所
6.業務内容
7.採用年月日
8.退職年月日とその理由

 


保育士がいきいき働く、保育園が元気に動く仕組みづくりを支援している社会保険労務士・中小企業診断士の関山です。
専門はこれまでの保育業界での経験を活かした保育園の労務支援・運営支援と想い入れたっぷりの分野です。
珍しい経験から鎌倉・逗子・葉山地域の保育園さまを始め、全国の保育園さまからお問合せいただくことも増えてきました。

そこでここでは園長先生からの労務面やキャリアパスなどに関するご質問やご希望に応えて、
保育園や保育士に役立つ「保育園育て」「保育士育て」の各種ノウハウをお送りしていきます。
ぜひ日頃の保育園の運営や保育士の労務管理、人材育成、キャリアパスなどの参考にされてください。

 

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