園長先生からの質問 Q4

“保育に役立つ”園長のための保育園の人事労務講座
~よい労務管理はよい保育を生む土づくり~

一般的に保育園では1年単位の変形労働時間制を使っている園さんが多いんですね。うちの園もまずは1年単位の変形労働時間制を検討したいと思います。1年を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内にするということはわかったんですが、1日や1週間で労働時間の上限はないんですか。

1、上限はないです。
2、1日10時間、1週52時間が上限です。
3、1日10時間、1週48時間が上限です。
4、1日12時間、1週52時間が上限です。
5、1日12時間、1週48時間が上限です。

答え(1つ)

答えの詳細

1年間の変形労働時間制でも大事なことは、いかにして比較的忙しくない時期の労働時間を計画的に減らして労使ともに負担を減らすせるかということです。ただ、その減らした労働時間の分、忙しいときに上限なく働くことができてしまうと、例えば1日12時間勤務が毎日続く月ができてしまったりして、現実的に健全な時間管理ができなくなってしまいます。そのため1か月単位の変形労働時間制よりも変形する期間が長くなり、結果として柔軟性がより高くなる1年単位の変形労働時間制では、1日10時間、1週52時間と上限時間を定めているのです。また、48時間を超える週は連続3週以内とする必要もあります(なお、1日8時間で週6日出勤としたら1週48時間以内なので影響しません)。1年単位の変形労働時間制を導入するうえでも、これまでの慣習や惰性で出勤日や出勤時間を決めていたら、よい効果は生まれず、かえって出勤日や出勤時間が曖昧で、手続きや計算などが煩雑な労務管理になってしまいます。思い切って忙しくない月や休みを取りやすい月を作って出勤日を少なくするとか、所定労働時間を短くできないか検討してみましょう。そうすれば、いわゆる残業の心配をしなくてもシフトのやりくりができるようになってくるため、職員にとっても計画的・安定的に日々の生活や保育をする目安やメリハリがうまれ、はじめて1年単位の変形労働時間制を導入するメリットが出てきます。

◆労働基準法 第32条4項(1年単位の変形労働時間制)

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定で第2号の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

1.この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2.対象期間(その期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、1箇月を超え1年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
3.特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第3項において同じ。)
4.対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
5.その他厚生労働省令で定める事項

 


保育士がいきいき働く、保育園が元気に動く仕組みづくりを支援している社会保険労務士・中小企業診断士の関山です。
専門はこれまでの保育業界での経験を活かした保育園の労務支援・運営支援と想い入れたっぷりの分野です。
珍しい経験から鎌倉・逗子・葉山地域の保育園さまを始め、全国の保育園さまからお問合せいただくことも増えてきました。

そこでここでは園長先生からの労務面やキャリアパスなどに関するご質問やご希望に応えて、
保育園や保育士に役立つ「保育園育て」「保育士育て」の各種ノウハウをお送りしていきます。
ぜひ日頃の保育園の運営や保育士の労務管理、人材育成、キャリアパスなどの参考にされてください。

 

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